昨日は、前兆に気づく力について触れました。本日は、その前兆が見えなくなる背景として、「小さな不誠実が組織をむしばむ」というテーマを考えてみたいと思います。
1.最初は“例外”として始まる
組織の不祥事や信頼の失墜は、突然起きるわけではありません。最初は、ほんの小さな行動から始まります。
〇 小さなウソ
〇 小さな不適切発言
〇 小さなごまかし
〇 小さなルール違反
〇 小さな例外対応
これらは、単体では“問題”として扱われないことが多く、「今回は特別」「現場が困っているから仕方ない」といった理由で見逃されがちです。
2.組織長や役員の承認が“正当化”を生む
小さな不誠実が最も危険なのは、組織長や担当役員が承認してしまう場合です。承認された瞬間に、その行為は組織の中で“正当化”されます。現場はこう受け取ります。
〇 「上がOKなら問題ない」
〇 「むしろこれが正しいやり方なのかもしれない」
〇 「正当な権限者が承認したので、正しいはず」
〇 「違和感を持つ方がおかしいのか」
こうして、違和感が消えていきます。そして、例外だったはずの行動が、“いつものやり方”として定着してしまうのです。しかし、この“誤解”こそが、組織を静かにむしばむ最初の一歩になります。
3.誤解が慣例に変わると、組織は静かに劣化する
承認された例外対応が繰り返されると、次のような現象が起きます。
〇 ルールが形骸化する
〇 過去の判例として正当化される
〇 手続きが曖昧になる
〇 説明のあいまいさが通用してしまう
〇 不正や不適切のハードルが下がる
こうした変化は、外からは見えにくく、内部でも気づきにくいものです。しかし、組織の倫理観は確実に侵食されていきます。
4.現場は“沈黙”を選ぶようになる
承認された不誠実を見た現場は、次第に声を上げなくなります。
〇 「言っても無駄、通用しない」
〇 「上がやっているのだから、仕方ないし、正しい流れだ」
〇 「自分だけ正しくしても浮くだけで、排除される」
こうして、沈黙が組織を劣化させ、組織文化として定着します。
5.組織長自身も“違和感を失う”
承認を繰り返すうちに、組織長自身も次第に麻痺します。
〇 「これくらいは、構わないだろう」
〇 「今回だけは、特別だ」
〇 「現場が困っているから、助けない訳にはいかない」
こうした“特例の積み重ね”が、組織の価値観を静かに変えていきます。組織の価値観は、トップの行動で決まります。だからこそ、トップが承認した瞬間に、小さな不誠実が“組織の正しい行動”に書き換わってしまうのです。沈黙の文化の中では、前兆に気づく力は育ちません。むしろ、前兆そのものが“見えなくなる”のです。
6.小さな不誠実を放置しないために
組織として不誠実を防ぐには、次のような取り組みが必要です。
〇 小さな声を拾う仕組み
〇 相談しやすい空気
〇 例外対応の記録
〇 定期的な振り返り
〇 初動対応の明確化
特に、違和感を曖昧にしない姿勢が大切です。違和感を共有できる場があるだけで、組織のリスク耐性は大きく変わります。
7.私たちができること
小さな不誠実を見逃さないために、今からでもできることがあります。
〇 違和感をメモすることを習慣化する
〇 小さな変化に敏感になる
〇 「なぜ?」と一度立ち止まる
〇 小さな違和感を周囲と共有する
こうした習慣こそが、組織全体の健全性を守る力になります。
<おわりに>
小さな不誠実は、最初は“例外”として始まります。しかし、承認され続けると、例外は慣例に変わり、組織の価値観を静かにむしばみます。年の初めに、「小さな不誠実を見逃さない姿勢」を意識してみることは、2026年をより良く過ごすための大切な視点になると感じています。どこか、思い当たる節が、ありましたでしょうか。


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