大型代理店による不正請求や損保社員による価格調整などの事件を踏まえ、損保業界に構造改革が必要とみて、金融審議会の作業部会にて議論してきました。今般、作業部会の報告書案が明らかになった旨、報道がありました。報告書は、健全な競争環境の実現と、顧客本位の業務運営の徹底の二つの課題について、解決の方向性を述べています。本日は、その概要について、コメントします。
課題解決項目は7つあり、①損害保険料率算出機構が示す保険料の目安や契約事項のひな型の範囲に新種保険を追加し、中小損保社の参入を容易にする。②ブローカーと代理店の協業解禁。③企業内代理店を守ってきた特定契約比率規制の猶予措置廃止。④契約企業のグループ企業への便宜供与禁止。⑤大型代理店に拠点ごとにコンプライアンス遵守責任者設置の義務化。⑥兼業代理店に対し顧客の利益を害する行為へ対応方針策定の義務化。⑦代理店都合による商品推奨の原則禁止です。
保険金不正請求事件では、顧客と利益相反する本業を持つにも関わらず、顧客の利益を阻害しないと宣言していなかったこと、拠点の内部統制が本業に留まり保険を含めた内部統制環境がなかったこと、保険会社からの便宜供与を受ける為に商品推奨ルールを曲げて運用していたことなどが要因と思われます。
一方、価格調整事件では、大企業の契約が大手4社の寡占状態にあったこと、その原因として、中小損保社の新商品開発に必要なデータの提供がないこと、ブローカーと代理店の兼業を認めていないこと、企業内代理店が企業グループに行う便宜供与禁止をルール化していなかったこと、特定契約比率規制の猶予措置を継続したことで、企業内代理店の自立化を促す機会を逃していたことが要因と思われます。
保険会社は、挙績規模の大きな代理店に対し、高い手数料を支払っていました。規模の大きい代理店の中には、経営者による形式的な体制整備に留まり、拠点マネジメントに落とし込んだ体制整備を行わず、従来通りの募集人ごとに異なる募集活動が行われ、内部統制ができていなかったことが、課題の本質ではないかと思われます。
また、保険会社は、大企業契約者の窓口へ直接提案・折衝を行うなど、企業内代理店が行うべき募集活動を代替したにも関わらず、代理店手数料は規定通りに代理店へ支払っています。加えて、代理店の募集保険料の半分以上は、外部で募集するルールでしたが、一部保険種目を除いた計算方式を暫定的に認め、その猶予措置を半世紀に亘り継続しました。この募集環境の下では、一部の企業内代理店は、グループ外の募集を増やす能力を発揮できなかったかも知れません。
これは、企業内代理店を責めるものではありません。企業内代理店の多くは、企業グループの子会社です。それゆえ、企業内代理店が決算で得た利益は、株主である親会社へ配当されます。連結決算であれば親会社の決算にも含まれる構造ですから、親会社はグループ会社に対して、企業内代理店で保険を付保するのは暗黙の了解であることは、健全な事業活動です。
なお、課題解決策の中で、二つ違和感を感じました。一つは、ブローカーと代理店の兼業を認めても、保険会社が直接大企業の窓口担当者と良好な関係があることから、ブローカーを活用しても企業側のメリットはないかも知れません。逆に、単年度赤字契約を容認していた保険会社は、ブローカーを挟むことで健全なレートへ戻せる可能性があります。これを機に、保険会社は挙績維持よりも、保険引受利益を優先する方向に進むかも知れません。
もう一つは、代理店経営者が抱える課題が解決していないことです。言葉を選ばずに申し上げれば、挙績の大きな代理店の経営者は、保険会社との交渉者的存在でした。解決するには、代理店経営者が、保険会社との交渉する役割を変えねばなりません。代理店経営者が、これまでの保険会社との関係を真摯に反省し、本来あるべき経営者の役割と保険業法や関係法令を正しく理解して習得しないと、課題は解決しないと考えます。具体的には、経営者には社外の支援者・指導者が必要と思われます。
本日は、報道を拝見して、自分なりの解釈と意見をコメントしました。不適切な記述があれば、ご容赦ください。次に新しい報道があれば、その都度ご説明します。



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