営業目的の出向廃止

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損保の保険料カルテル事件や情報漏えい事件は、同業他社や代理店との慣れ合いが、原因でした。そこで、損保業界は、営業目的の出向を廃止する旨、報道がありました。本日は、本件について、考えてみます。

うがった見方をすれば、営業目的以外の出向へ変更するという趣旨に見えます。営業目的以外の出向とは、業界に共通する課題への対応、転籍を前提としたセカンドキャリアの形成、代理店の内部統制を強化、出向する社員の人材育成の4つだそうです。

業界に共通する課題への対応とは、オリンピックや博覧会の事務局、官庁、政府系機関への出向などを指します。これは、国民生活の安定及び国民経済の健全な発展に資することを目的にする出向であり、保険業法の目的に合うことから必要な出向です。

転籍を前提としたセカンドキャリアの形成とは、通常1年程度の出向期間終了後に転籍する仕組みです。出向期間中には、保険料カルテルや情報漏えいのリスクの撲滅や削減は出来ていないので、これだけの条件であれば、適切とは思われません。

代理店の内部統制を強化とは、コンプライアンス責任者や営業本部長として出向させる制度です。役職者であっても、発生しているリスクがなくなる訳ではなく、特定の代理店との慣れ合い関係を解消するには至らないことから、適切とは思われません。

出向する人材の育成とは、代理店へ出向させることで、従業員に新たな気づきや自社の業務プロセスの不備などを見つけ自社の改善に繋げる趣旨です。出向終了後に、各社の営業戦略や第一線での営業や損害サービスの実務に好影響をもたらすとすれば、社会に対して、営業目的でないと説明するのは難しいと思われます。

損保業界には、旧態依然とした風土と環境が残っています。代理店への出向は、相手の懐へ入る訳ですから、薬と共に毒も持ち込みます。代理店側もそのことを理解した上で、一定程度は容認しているのが現状でしょう。この風土と環境を変えなければ、カルテルや情報漏えいは、なくならないかも知れません。

例えば、当局へ事前に出向者の報告を行うことで、各社が自主的に不正行為を制御する対策が考えられます。申請書式を業界で統一し、e-Govを通じて申請する制度です。行政は、出向者名や出向者数、出向先代理店の実名を把握することが可能になります。異常値や不適切な出向が発生すれば、確認項目を追加するなど、対策を講じやすくなります。但し、責任の所在が、出向元にあることは変わりません。

もう少し詳細な実施要領が報道されれば、我々一般人にも理解できると思いますが、今回の報道だけでは、本質的な改善には、時間を要すると感じました。

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