日常活動に潜む落とし穴

question marks on brown surface

コンプライアンス違反というと、「故意にルールを破る」「悪意のある行為」をイメージしがちです。しかし、現場で実際に問題になるのは、むしろ“善意のつもりでやった行動”が引き起こすリスクです。特に厄介なのは、本人は良かれと思ってやっている“グレーな親切”です。これは、現場で頻繁に起きているにもかかわらず、問題意識が薄いケースが多いのが特徴です。本日は、最近増える傾向にある「善意の落とし穴」を整理してみます。

1.説明を“簡略化してあげる”という善意
お客さまが忙しそうな時、つい次のような対応をしてしまうことがあります。
 〇 「細かい説明は省きますね、重要なのはここだけです」
 〇 「難しい話は抜きにして、結論だけお伝えします」
一見すると親切ですが、これは説明義務の欠落につながります。お客さまのために“簡単にしてあげた”つもりでも、後になって「聞いていない」「そんな説明は受けていない」と言われれば、募集人の責任になります。善意であっても、説明を省略してはいけません。

2.書類を“預かってあげる”という親切心
 〇 「今日は時間がないでしょうから、書類は預かっておきますね」
 〇 「後で書いておいてください、私が会社に出しておきます」
これも、よくある“親切”です。しかし、書類の預かりは 紛失リスク、改ざん疑義、記録管理の不備 など、重大な問題につながります。特に最近は、記録の厳格化が進んでいるため、「預かった書類がどのタイミングで、誰の手にあったのか」が曖昧になること自体がリスクです。

3.お客さまの発言を“免罪符”にしてしまう
 〇 「説明は不要と言われたので省略しました」
 〇 「お客さまが急いでいたので、確認は後回しにしました」
 〇 「前回と同じでいいと言われたので、そのまま更新しました」
これらは、現場で非常に多い“誤解”です。お客さまの発言は、募集人の説明責任を免除するものではありません。 むしろ、お客さまが急いでいるときほど、説明の質が問われるのが現実です。「お客さまが言ったから」は、リスク回避にはなりません。

4.“例外対応”をしてあげるという特別サービス
 〇 「今回は、特別にこの方法で対応しますね」
 〇 「本来は違うけど、お客さまのためにやっておきます」
これも、善意のつもりで行われる典型例です。しかし、例外対応は、業務品質の統一を壊す最大の要因です。例外が共有されないまま積み重なると、
 〇 組織としての基準が曖昧になる
 〇 管理職が現場を把握できなくなる
 〇 トラブルや苦情の原因が特定できなくなる
という“組織的なリスク”に発展します。

5.善意がリスクになる理由
善意の行動は、次の特徴を持っています。
 〇 記録に残らない
 〇 統一基準から外れる
 〇 再現性がない
 〇 個人依存になる
つまり、善意は「業務品質の統一」と真逆の性質を持っています。善意そのものが悪いわけではありません。しかし、基準を超えた善意は、組織としての統制を壊すのです。

<まとめ>
コンプライアンス違反は、悪意ではなく“善意”から生まれることが多くあります。
 〇 説明を簡略化する
 〇 書類を預かる
 〇 お客さまの発言を鵜呑みにする
 〇 例外対応を特別に行う
これらはすべて、現場では“親切”として行われがちですが、 実は重大なリスクを内包しています。業務品質の統一とは、「善意の例外」を減らし、基準に沿った行動を徹底することでもあります。まずは、現場で起きている“善意の落とし穴”を見える化し、 組織として共有するところから始めてみましょう。

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