2025年の年初にあたり、2024年を振り返ってみます。世間を賑わせたニュースを10テーマ挙げると、二つの戦争、能登半島の地震と豪雨災害、裏金問題、パリオリンピックの活躍、衆議院選挙、県知事問題、大谷選手の50-50、新紙幣発行、闇バイト、新NISAが思い浮かびました。
企業における法令違反も、数多く明るみになりました。銀行貸金庫の窃盗、証券営業職の強盗放火、保険会社社員の保険料カルテル、製薬会社製品の健康被害、自動車メーカーの認証不正、航空機と官庁機の衝突事故、鉄道各社の車両と輪軸の検査データ改ざん、複数業界における下請法違反、複数業界における出向先顧客データを出向元へ漏えい、金融機関のインサイダー取引疑いが、記憶に残りました。
年間を通じて感じたのは、企業内における文化、風土、商習慣などの中に、コンプライアンス事案や法令違反行為があり、その一部が表面化したことです。表面化する機会は、内部通報、外部からの指摘、第三者機関からの調査など様々ですが、これは社会による監視が機能しているという良い兆候と思われます。
では、どのようにして企業内の文化、風土、商習慣などの中から、不適切な事業活動や法令違反を探し出せば良いのでしょうか。初歩的な手段ですが、実名+匿名の従業員アンケート実施があります。アンケートという目安箱に、情報を集める手法です。
しかし、上司の眼が気になったり、昇給昇格に影響すると誤解する従業員も多数います。そこで、事前に社内連絡等において趣旨と目的を開示し、各マネージャーに事前説明させるシナリオを提供するなどの露払い作業が必須です。
伝わり方によっては、社内の不正行為をあぶりだすのが目的と勘違いする従業員が出ます。自分が、下請け企業をイジめる役割だったとしたら、法令違反であると薄々気づいても、アンケートに記載する勇気はないでしょう。
仮に、法令違反行為があっても、就業規則違反でなければ執行猶予付きの処分を約束するなど、個人を責める機会より事業活動を見直す機会にする趣旨を処分に反映する対策も、検討できるかも知れません。
保険業界は、毎年人員削減が続き、損害サービス部門や営業部門は、厳しい対応を続けています。取引先とのコミュニケーションに要する時間を削減し、新商品やシステムツールを取引先が習得するまでフォローアップする余力は、なくなりました。一方で、システム活用や代理店の集約化などの必須項目は、優先順位高く進めました。
この環境下において、人に与えられた役割と目標を達成する為に、常にコンプライアンス違反がないかと考える余裕はなく、気づく機会すらないと思われます。時計を止めて、自らや周囲の他人の商習慣や風土を見つめ直す機会は、これからの企業には必須の独自能力ではないかと思います。
業界を問わず、自社では常識または正しいと進めている事業活動が、社会の非常識または非難を受ける活動であった事象が、多い印象があります。しかし、自社で見つけたり、初期段階で発覚できれば、社会から避難を受けるには至らずに対応できる可能性があります。
大企業の社長や役員が、白い壁と白いデスクを前にして、謝罪会見する姿は、見飽きました。不祥事や不正を少なくし、各社の経営理念の実現に向けた事業活動を可能な環境を作る支援をするのが、経営者とコンプライアンス部署の役割だと思います。
「物事を正しく見るには、習慣や常識は邪魔です。」サイゼリアの会長の名言です。言い換えれば、商習慣や常識と思っていることは、必ずしも世の中を正しく見ていないということだと思います。今年も、お役に立てる情報をお伝えしていきたいです。



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