高速道路を運営する企業において、ETCシステムに障害が発生して、1日以上に亘り17路線において、ETCが使えませんでした。本日は、危機対応への準備について、考えてみます。
大規模なシステム障害を受けて、監督官庁は、原因の究明、ならびにシステム障害に対応できるマニュアルを整備するように求めました。もちろん、高速道路運営企業には、災害や事故が起きた際の非常時マニュアルはあるはずです。今回の趣旨は、大規模なシステム障害が起きた場合の対応と、復旧に向けたフローを整備するように求めたと思われます。
当該企業側に立って、危機対応を考えた時に、最も事業リスクが高いのは、お客様である車両通行ユーザーを危険にさらすことです。道路の毀損や破壊、トンネルや山の崩壊、川の氾濫などにより車両が走行できなくなることです。お客様の安全・安心・快適が、目指す姿だからです。
一方で、ETCの導入により、24時間多くの料金収受担当がインタチェンジに勤務する必要はなくなりました。ETC利用率が低かった頃は、システム障害が起これば、現金収受に変更することで対応が可能でしたが、利用率が50%を超えた現在では、非常時対応マニュアルを見直す必要があります。今回、長時間に亘り、対応や復旧が出来なかったのは、マニュアルの見直しが十分でなかったと考えられます。
とは言え、今回のように17路線もの広域で、同時にシステム障害が発生した場合、通行車両の料金収受と、システムの復旧という二つの課題に直面します。システムの復旧については、今回のように休日に発生し、長時間を要することもあり、いつまでに復旧させるという業務フローの筋書きは、成り立ちません。料金の収受についても、人での代替の可否を考えると、難しい課題です。
そこで、システム障害中は、料金収受を諦めるという対策も考えられます。人手代替可能なレベル、例えば一つのインターチェンジだけの障害であれば、高速入口に「ETC障害の為、現金・クレカ支払いに限ります」という旨の表示をすることで、現金・クレカ支払いが不可能なユーザーだけに支障が生じます。人手代替が不可能なレベルの場合は、復旧するまでは全ての車両を無料にしてしまう対策が考えられます。
その場合は、ユーザーには支障は起きませんが、企業側の利益が減少します。そのリスクに対して、利益保険に加入することで損失をカバーし、大規模システム障害の復旧費用もシステム障害を補償する保険に加入することで、企業側が失うお客様の信頼をカバーすることが可能になります。
とは言っても、のんきにシステム復旧していたら、社会からの批判を受けてしまい、更に受け取る保険金が増えると、次年度に必要な保険料が前年度より大きく上がることから、迅速に復旧させることに変わりはありません。
障害の原因を究明し、その対策を講じることにより、次年度以降の保険料を安くすることも可能かも知れません。何よりも、通行車両と人の安心・安全・快適が優先する企業ですから、事業停止リスクが減少すれば、それだけ社会からの信頼に応えることになります。万が一、システム障害が再発した場合には、より早く復旧して、その間に通行車両と人が安心・安全に通行できることを望みます。



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