多くの経営者が「コンプライアンス=法律を守ること」と狭く捉えがちです。法令遵守は基本ですが、それだけでは十分ではありません。社員が安心して声を上げられる環境を整備したり、お客様や社会からの信頼を得ることも、コンプライアンスの重要な要素です。法律だけに目を向けると、組織文化の醸成を見落とす危険があります。本日は、代表的な落とし穴の例について、ご説明します。
1.規模過信の落とし穴
「不祥事は大企業の話」「うちは小規模だから大丈夫」と考える経営者は少なくありません。しかし、SNS時代には小さな不正や不適切な発言が瞬時に拡散し、企業規模に関係なく信用を失う可能性があります。 近年も、広告表現の配慮不足や公式SNSの不用意な投稿が原因で、中小企業が炎上し、数日で信用を失った事例が報告されています。SNS時代には、規模の大小に関わらずリスクは常に存在します。落とし穴は「規模の小ささ=リスクの小ささ」と誤解することです。
2.ルール依存の落とし穴
社内規程やマニュアルを整備することは大切ですが、それだけでは社員の行動は変わりません。経営者自身が日常の言動で示す姿勢を見せること、社員が「守る理由」を理解できるまで説明を行うこと、これらがなければ、ルールは形骸化します。経営者が、繰り返し「なぜそれが必要なのか」を語ることが不可欠です。
3.「危機対応は担当部署に任せればよい」と考える
不祥事や炎上が起きたとき、経営者が沈黙すると「責任逃れ」と受け取られます。危機対応は広報や法務だけでなく、トップの姿勢が問われる場面です。2025年上半期には、内部告発がSNSで拡散し、経営者が沈黙したため「隠蔽体質」と批判された事例もありました。初動でトップが関与したり、誠実に説明させることが、信頼回復の第一歩です。
4.「短期的な利益」を優先する
営業や製造などの第一線で「多少の無理をしてでも数字を作れ」というメッセージを出すと、社員はコンプライアンスよりも目先の成果を優先しがちです。結果として、不正やお客様トラブルにつながり、長期的には企業価値を損ないます。経営者が「利益と信頼の両立」を明確に示すことが重要です。例えば、定期的に「利益と信頼の両立」をテーマにした社内ミーティングを設けることで、社員に経営者の姿勢を伝えることができます。
これらの落とし穴に陥らないためには、経営者は、どのような予防策を講じたら良いでしょうか。まずは、ご自身に対して、以下のような問いかけを行うことをお薦めします。
〇 あなたの会社では「コンプライアンス=法律」だけになっていませんか?
〇 社員が安心して声を上げられる文化を育てていますか?
〇 不祥事が起きたとき、経営者自身がどう動くか準備していますか?
例えば、経営者が定期的に社員と対話する場を設けるなど、幾つかの行動を始めると、変わる兆しを感じることがあります。コンプライアンスは「守るための負担」ではなく「信頼を積み上げる投資」です。経営者がこの視点を持つことで、組織は強く、持続可能になります。



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