2025年12月17日、金融庁は保険業法施行規則および監督指針の改正案を公表しました。 今回の改正案は、損保不正請求問題やカルテル問題を背景に、乗合代理店の比較推奨販売を大幅に見直す内容となっています。ただし、現時点では保険会社各社の運用ルールが固まっていないため、以下は金融庁の改正案をもとにした“方向性”の整理です。
1.改正の背景──「顧客本位」の徹底へ
金融庁は、比較推奨販売ルールの課題について、次のように整理しています。
〇 特定社の商品を推しすぎる販売実態
〇 手数料や関係性による恣意的な商品選別
〇 形だけの比較提案の実態
要するに、形式的なルール遵守だけの比較提案を防ぐためのものです。
2.本質的な変更点
① 「ハ方式」の廃止と「ロ方式」への一本化
これまでの比較推奨販売には「イ・ロ・ハ」の3方式がありましたが、 代理店独自基準で商品を絞り込む“ハ方式”が廃止されます。今後は、顧客の意向 → 比較可能な同種商品 → 推奨理由の説明 という“ロ方式”が中心となる見込みです。
② 推奨理由の説明義務がより明確に
「総合的に判断して」「当店の方針で」では不十分で、顧客の意向に基づく“選別プロセス”の説明が求められます。
③ 記録の重要性がさらに高まる
監督指針案では、選別基準、比較対象、推奨理由を記録することが重視されています。
3.代理店が実務で対応すべきポイント
現時点で確定ではありませんが、改正案から読み取れる“実務上の方向性”は次のとおりです。
① 推奨理由の高度化
〇 「安いから」「人気だから」では説明義務を満たさない
〇 顧客の意向 → 選別基準 → 推奨理由
この一連の流れを言語化する必要があります。
② 比較対象の選び方の透明性
〇 同種・同目的の商品を比較対象に含める
〇 恣意的な絞り込みはリスク
③ 記録の標準化
〇 ロ方式では「募集記録」が最重要
〇 曖昧な記録は行政処分リスクにつながる
④ 社内ルール・教育体制の整備
監督指針案では、体制整備、研修・指導、監査等による検証が求められています
4.実務で起きやすい“落とし穴”と留意点
① 比較対象の選定が代理店都合になる可能性がある
金融庁は「顧客の最善利益」を強調しているため、恣意的な選別はリスクになります
② 推奨理由が抽象的になる
「総合的に判断して」はNGとされていますが、そもそも“正当性のある推奨理由”をどこまで明確にできるのかという課題が残されています。
③ 記録が不十分
ロ方式では“記録=証拠”となる為、曖昧な記録は後から説明できないことになります
④ 教育が追いつかない
改正後は「教育の質」が代理店の評価を左右する
<おわりに>
比較推奨販売は“説明責任の時代”への変革です。今回の改正案は、比較推奨販売を代理店の裁量から、法令に基づく義務へと位置づけ直すものです。まだ保険会社各社の運用ルールは固まっていませんが、推奨理由の明確化、比較対象の透明性、記録の標準化、教育体制の強化 は、どの代理店にも共通する対応ポイントです。
比較推奨販売ルールは、以下の2方式になります。
〇 イ方式 比較説明のみ。推奨は行わない
〇 ロ方式 顧客意向に沿った商品を推奨する
※ 判断基準の社内規則化が必須
代理店に所属する募集人全員が、各社の商品を正しく比較説明できますか。お客様の意向を正しく把握して記録し、それに基づいた商品を推奨することができますか。加えて、その為に必要な判断基準について、全てのお客様からご理解、ご納得いただけるだけの社内規則を定めることができますか。この問いに対して十分に説明できない限り、比較推奨販売ルールを適切に運用することは極めて難しいと考えるべきです。少なくとも記録する項目を揃える、記録する文化を定着させる、全員の業務品質を揃える、このようなことを考えることが、新しい代理店経営者が目指す姿だと思います。
弊社では、このような代理店主や共感いただける代理店さんをご支援して参ります。まずは、ホームページの「お問い合わせ」からご連絡ください。



コメント