コンプライアンス違反は、発生そのものも重大ですが、その後の対応によって組織の信頼が大きく左右されます。対応を誤れば、発生事象以上に社会からの批判を浴び、企業価値を損なうこともあります。本日は、対応において企業が陥りやすい代表的な落とし穴をご紹介します。
1.事実認定の不一致の落とし穴
違反行為が発覚した際、被害者名を非開示のまま加害者へヒアリングを行うと、本人が別の事象や別の被害者を思い浮かべてしまい、認識が擦り合わないことがあります。特にハラスメント事案では、加害者が複数の人に対して不適切な言動を繰り返している可能性があり、曖昧な確認では真相にたどり着けません。近年も、被害者を特定せずにヒアリングを行った結果、事実認定が混乱し、対応が遅れた事例が報道されています。
予防策:被害者を特定した上で事実関係を擦り合わせ、加害者には「被害者への接触禁止」を明確に伝えることが不可欠です。その際、セカンド・ハラスメントの加害者になり得ることを書いた書面に加害者から署名を受けるなど、形式を整えることで確実性が増します。
2.説明責任の不足の落とし穴
「なぜ違反と判断したのか」「なぜ対応・処分に至ったのか」を本人に十分に説明しないと、本人は「納得できない」と感じ、SNSや記者会見などで自ら発信する事態に発展します。これが組織と本人のすれ違いを拡大させ、炎上の火種となります。最近も、説明不足が原因で本人が記者会見を開き、組織と本人の認識のすれ違いが社会問題化した事例がありました。
予防策:違反の根拠となる規程や事実を加害者へ明示し、本人に弁明の機会を与えること。透明性ある説明が信頼回復の第一歩です。顧問弁護士の意見を基に行動する企業は多いですが、法令のスペシャリストであっても社会規範のスペシャリストではありません。社会からの信頼を失わないためには、社内の担当部署が中心となり、透明性ある対応を協議しながら進めることが肝要です。
3.被害者保護の不備の落とし穴
加害者への対応ばかりに注力し、被害者の人権や心理的安全性を十分に守らないと、組織は「隠蔽体質」と批判されます。被害者が加害者から接触や圧力を受ければ、二次被害が発生し、社会的非難や損害賠償に発展する可能性があります。過去にも、被害者が加害者から接触を受けて二次被害が拡大し、企業が厳しい批判を浴びた事例がありました。
予防策:被害者への接触禁止を徹底し、必要に応じて外部相談窓口や第三者調査を活用する。
4.社会への説明不足の落とし穴
内部で処分を決めても、社会や顧客に対して説明が不十分だと「隠している」「責任逃れ」と受け取られます。結果として、組織全体の信頼が失われることがあります。スポンサー離れや不買運動に発展した事例もあり、社会への説明不足は経営リスクに直結します。
予防策:加害者が著名人や公人の場合には、特に事実確認の方法、被害者保護の措置、再発防止策を公表し、透明性を確保することも対策となります。
<経営者の皆様への問いかけ>
〇 違反発覚後、事実認定を曖昧にしていませんか?
〇 本人に十分な説明責任を果たしていますか?
〇 被害者の人権を守る仕組みを整えていますか?
〇 社会に対して透明性ある説明を行っていますか?
コンプライアンス違反後の対応は、単なる「処分」ではなく、「信頼を回復するためのプロセス」です。落とし穴を避け、透明性と誠実さを持って対応することで、組織は社会からの信頼を守り、持続可能な成長につながります。



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