大手損害保険会社4社に対して、金融庁が報告徴求命令を発出しました。また、公正取引委員会が4社に対してカルテルを結んだ疑いを持って、調査を開始した旨、報道がありました。本日は、本件について、解説させていただきます。
企業グループの損害保険では、毎年ビットと呼ばれる入札を行いつつ、最低価格を提示した保険会社を幹事会社として契約を締結して、入札に参加した保険会社を共同保険で引き受ける方式にしていることがあります。
契約者側には、毎年入札を行うことで、直近最低価格で契約するメリットがあります。ただし、自社で契約や補償内容を管理する必要があり、各社商品の改定や各保険の幹事会社が変わると、事故時の対応が異なる場合がある、更新5か月前に各社へ数値や資料を提出する手間がかかるなどご苦労もあります。
保険会社側では、非幹事契約は、幹事会社とのお金の流れだけですが、幹事会社は事故の対応整備や事故の未解決事案の対応、次年度保険料基礎数値の算出など、様々な業務があります。共同保険の分担比率は、契約者が決めますので、幹事契約で共同保険のシェアが低いと辛いです。更に、損害率が高い場合には、会社と契約者双方の利益改善の為に、様々な手段を講じることになります。
このように、入札を行う企業契約は、一般的な優越的地位の濫用には該当しません。なぜなら、幹事会社と共同保険の分担割合の決定権は契約者側にあり、保険会社側には優越的な地位がないからです。
何らかの形で契約者へ提示する保険料を事前に他社へ開示したなどの行為があれば、不祥事として金融庁へ既に報告しているはずです。その内容から他の契約にも同様な事象があり、企業営業の常識化していないかを危惧したとすれば、報告徴求命令があっても不思議では、ありません。
報道でしか内容を知らないので、これ以上は解説できません。危険な兆候は、公正取引委員会が調査を開始したことです。公正取引委員会ににらまれたら、不正はないと証拠を示して説明しても、逃げ切れない場合が多いと学びました。4社は、公正取引委員会からの調査には、フリーズして誠実に受け答えを行いつつ、期限が迫って来る報告徴求命令への報告書の作成を行うので、かなり忙しくなります。



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