百貨店の催事場から1,040万円の純金製茶わんを盗み、当日に買い取り業者へ180万円で転売した事件が報道されました。更に、買い取り業者が、同日に別の業者へ400万円以上で転売しました。本日は、犯罪と社会規範について、考えてみます。
この事件で不自然なのは、買い取り業者の振る舞いです。業者は、純金製茶わんに含まれる金の価格は480万円相当と承知していたはずです。それを180万円で買い取った背景には、売り手が金の価格を知らない弱みに付け込んだと考えられます。
通常、買い取る際は、品物を入手した経路や日付などを聞いて記録するそうですから、買い取りのプロに対して理路整然と虚偽説明ができるとは、思えません。不自然な物言いを察知した業者が、極端に低い価格を提示して、高い利益を上げようと悪だくみをしたのではないかと推測できます。同日に他の業者へ転売して利益を確定させた行為が、それを裏付けています。
この事件は、法令違反と社会規範に反する行為が混在する事件です。盗難者は法令違反の実行犯、買い取り業者は社会規範に反する行為の確信犯と思われます。盗難者は法の制裁として行政処分を受けますが、買い取り業者は行為の代償として社会からの制裁を受けるでしょう。
コンプライアンス研修の必要性は、買い取り業者がとっさに考えた悪だくみを防ぐことです。法令違反に加え、社会規範に反する行為や非常識な行為の方が、批判が大きくなり、マスコミが騒いだりネットで炎上することで、社会からの信頼を失います。
法令違反は、処分の軽重が決まっています。しかし、社会規範に反する行為をすると、騒がれて炎上した結果、どの程度の制裁を受けるか、定まっていません。社会からの制裁を受けるリスクをレピュテーションリスクと言います。
本日、お伝えしたいのは、法令違反よりも社会規範に反する行為の方が、自身や自社が受けるダメージが大きいと言うことです。弊社では、コンプライアンス担当の育成や経営者向けのご支援において、この類型についても、ご説明しています。



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