記者会見

a woman holding a microphone standing in a room with a group of people

連日、報道を賑わせている中古車販売店の社長が、記者会見を行いました。経営陣が知らぬ間に、現場管理者と従業員が不正行為を働いた。やり口は、言語道断。自身と息子は役員を退任して、残った経営陣で新しい体制とするとのこと。本日は、当該企業が、このような空気を読めない会見を行った原因について、考えてみます。

記者会見の失態は、顧問弁護士が、社長と息子、取締役に対して、今回の事件の全容、これから追及されるであろう他の不正や不適正の事実について、正しく伝え切れていないことが原因です。具体的には、当該企業に対して社会が求めていることを教えていないか、理解できなかったと思います。

社会が求めていたのは、事実解明の状況、全容解明に要する時間と手法、被害者への救済方法と時期、企業経営者として内部統制できていなかったことを認めて謝罪することでした。役員退任や新役員、行為者に対する処罰、責任の所在、役員が不知であった事実などは、求められていません。

事故車の修理額の水増しによる保険金詐取、預かり車をタイヤパンクさせ不要な修理代の詐取、新品と偽り中古品を装着する差額詐取、事業所前の街路樹に除草剤を散布する環境破壊行為など、報道された行為は、企業活動としては、常軌を逸した行為の数々でした。

社会が求めていたのは、常軌を逸した行為の数々が起こった経緯、不正を始めるまでの行為者の心の推移、多数拠点に行為が展開された経緯、LINEを活用した内部統制や管理職への督励の実態、取締役会の内容、役員による拠点訪問の実態、役員と従業員に対するコンプライアンス研修の状況などでしょう。

上記の経緯や実態を説明することで、企業経営者として説明責任を果たすことになります。しかし、経営者が実態不知であり、現場従業員が勝手に行ったこと、社長と息子が退任することで企業として存続することを伝えただけでした。かなりズレた会見です。

こうなった原因は、弁護士から受けた説明と第三者委員会による調査報告書のうち、社長が認めた内容だけを会見で伝えたからです。役員全員が、お互いをかばい合い、退任と新体制を公表することで、不祥事の幕引きをしようとしたからだと思います。

不祥事発生時に取るべき行動は、会社を守ることでは、ありません。事実の全容解明が短期間で可能なこと、発生原因とそれに対する再発防止策を公表できること、被害者がこれ以上ないと言う根拠のある説明ができることに尽きると思います。

企業存続の是非は、社会が決めるからこそ、経営者としての説明責任を果たすことが大切だと言うことを忘れなようにしましょう。弁護士に相談したから大丈夫と言うのは、コンプライアンスの基本への理解が乏しいと考えて欲しいと思います。

中小企業で、創業者やオーナー社長のトップマネジメントだけで事業活動が成り立っている会社は、今回と同じことが起きる可能性が高いです。そうなる前に、企業風土の改革、経営者の考え方の改善、風通しの良い企業にする活動などを行い、トップに速やかに正しい情報が伝わる体制を作りましょう。

弊社では、自身のトップマネジメントに不安を感じている企業経営者の方には、ご相談を通じて、何から始めると良いか、自社に合っている風土の作り方は何か、役員が社会の求めを理解できるか、などについて、解決策へ向けた考え方のお手伝いをさせていただきます。

ホームページの「お問合せ」から、どんなお悩みがあるか、何を考えているのかなど、お教えください。ご相談が必要であれば、その旨をご回答させていただき、限られた人員だけでお打合せを行い、経営理念や企業理念を改めて理解すると共に、仮題を洗い出していくことから、始めます。

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