一連の保険会社や代理店による不祥事の影響で、保険業法と監督指針が改正になります。そこで、本日は、保険代理店経営者が備えておくべき、体制整備の取組みと内部統制のポイントについて、考えてみます。
以下の10項目に分類して、整理すると、頭に入りやすいと思われます。
生損共通:
① 経営方針 ② 教育・研修体制 ③ お客様からの声に対応する体制 ④ 自己点検と改善する体制 ⑤ 情報セキュリティ管理(含むサイバー攻撃対策・Web会議) ⑥ マネーローンダリング対策
損保固有:
⑦ 意向把握と比較推奨販売 ⑧ 満期更新・定型商品販売の再評価
生保固有:
⑨ 意向把握と商品選定理由の記録 ⑩ 乗換募集の妥当性確認・高齢者対応
| 項目 | 内容 | 実務ポイント |
| ① 経営方針(FD宣言) | 顧客本位の業務運営方針の策定・公開 | Webや店頭で掲示。年度毎の見直しが望ましい |
| ② 教育・研修体制 | 商品・法令・倫理などの継続教育 | eラーニング+集合研修、履歴保存必須 |
| ③ お客様からの声に対応する体制 | 記録・対応履歴・原因分析と是正 | 定期的な苦情レビューとフィードバック実施 |
| ④ 自己点検・不備改善 | 自主点検項目を定め、定期的に点検・改善 | チェックリストを活用。保険会社任せにしない |
| ⑤ 情報セキュリティ管理 | セキュリティ方針、端末管理、紙媒体管理 | 漏えい時対応手順も明文化。従業員教育もセット |
| ⑤ サイバー攻撃対策・Web会議 | ウイルス対策、画面共有ルール、録画の取扱 | Zoom等利用時は背景・マイク管理に注意。公共Wi-Fi回避 |
| ⑥ マネーローンダリング対策 | 疑わしい取引のチェック、反社排除、KYC対応 | 高額契約・短期解約・一時払に注意。研修必須 |
| 項目 | 内容 | 実務ポイント |
| ⑦ 意向確認・比較推奨販売 | 補償ニーズごとの意向確認と比較理由の記録 | 「価格のみ」推奨はNG。補償内容・事故対応等も説明 |
| ⑧ 更新・満期管理 | 定型的な更新対応における意向再確認と説明責任 | 「前年同様」ではなく、更新時にも意向を再確認 |
| 項目 | 内容 | 実務ポイント |
| ⑨ 意向把握・商品選定理由 | 目的(死亡・医療・資産形成)ごとの商品提案理由を明文化 | 提案書に「選定理由」と「代替案との比較」も記載 |
| ⑩ 乗換募集の管理 | 旧契約との比較、補償・返戻金・コストの変化の記録 | 高齢者対応も含め、説明・同意・記録の三点管理 |
| ⑩ 高齢者への対応 | 65歳以上は複数説明、家族同席、録音等 | 保険会社の指針を参考に、社内対応基準を整備 |
なお、教育・研修体制の中には、新たに、不適切な便宜供与、不当な取引制限(保険料調整)の項目が含まれます。
体制の整備と内部統制を行うにあたり、その着眼点を一覧表にして整理しました。
| 比較項目 | 損害保険 | 生命保険 |
| 特徴 | 継続型契約が多く、意向確認が形骸化しやすい | 乗換型が多く、適合性・説明責任が重視される |
| リスク | 比較推奨の不適正、事故対応トラブル | 高齢者・高額契約の適合性/乗換の不備苦情 |
| 強化点 | 更新時の意向確認/比較推奨の妥当性証明 | 意向と商品選定理由の記録/高齢者対応ルール |
| 重要資料 | 満期案内記録、推奨理由記録 | 面談記録、乗換理由書、本人確認書類 |
どの項目も、社内ルールを統一し、募集やお客様対応の統一を徹底していることを記録して説明できるようにしなければ、なりません。更に、社内ルール運用において課題を見い出す仕組みを作って稼働させ、見出した課題を解決する取組みを行い、必要に応じて社内ルールを見直すという取組みが必要です。この取組みは、業務品質向上サイクルと呼ばれています。
代理店の規模や特性によっては、代理店主一人では体制整備や内部統制を運営することはできません。代理店主、保険部門責任者、コンプライアンス責任者が役割を分担して協働しながら運営するスタイルでないと、社外評価を受ける準備が整いません。
弊社では、規模と特性に応じた体制整備と内部統制を運営していく為のご支援を外部の立場から行っています。詳細は、ホームページ上段の「お問合せ」より、お問合せ下さい。



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