最近、国会議員などの公職者や、企業経営者などの公人が、公の場において失言をしてしまい、その対応が良くない故に、更に大きな事象に発展することが増えてきたように思います。本日は、公の場における失言について、考えてみます。
一般的に、失言は誰にでもある行為です。しかし、ここで失言と呼ばれているのは、社会的影響力を持つ立場にある人が、対象者です。公職者や公人がそれに該当します。また、失言をする場面も、公の場と限られています。会議室やプライベートな会話の中では、たとえ同じ発言があったとしても、失言とは言いません。
そこで、失言を未然に防ぐ対策について、考えてみます。メディア対応に慣れていない方であれば、メディア・コミュニケーション研修を行うことが必要です。危機管理広報の基本や、記者対応、SNS発信時の注意点を理解し、オフレコとオンレコの違い、表現のニュアンス(差別的表現・過度な一般化)に敏感になることです。
次に、公の場でスピーチを行う際に、事前に自身で、「誰が聞いても誤解しないか」「発言を切り取られても問題ないか」「公共の利益や企業の理念に反していないか」というフィルターにかけることです。
自身でできない場合には、その役割を担う人に依頼します。具体的には、公式発表文やSNS投稿は、必ず広報・秘書・法務がチェックする、即席の記者対応やスピーチでも、想定問答集(Q&A)を準備することです。慣れてしまえば、そんなに多くの時間を要しません。
加えて、公職・公人の周りで、言葉に対する感応度を高める習慣を付けることです。差別的表現・性別役割の固定化・社会的偏見に関する研修や勉強会を役員向けに実施したり、若手社員・秘書などが自由に「それ、まずい表現では?」と意見できる文化を作ることです。日頃から、指摘されていれば、自ずと発言の限界点を習得するようになると共に、自分の未熟さに気づきます。
次に、実際に失言してしまった場合の事後対応です。まずは、迅速な初動です。状況を把握し、当人からの説明・謝罪・訂正を検討します。通常は24時間以内です。その際、言い訳を避け、事実関係・意図・不適切性の認識を率直に伝えます。
二番目は、誠実な謝罪と再発防止策の提示です。「不快に思われた方々にお詫びします」ではなく、私の発言が不適切だったことにつき、明確に非を認めます。これは、発言した当人が腹落ちし、正しく理解しないと、実効性がありません。
最後に、謝罪会見や謝罪文を提出する際には、被害を受けた側の立場に立ったトーンを意識する、冗談・比喩の弁明よりも、不快を与えたことにフォーカスすることです。その際、自身を防御したり、社会に対して攻撃的な発言をしたり、弱者を軽視している印象を持たれないように気を付けます。
SNSやネットに情報が拡散してしまった場合には、誤解を招いているポイントを明確にし、事実を正確に発信する必要があります。これは、消去やブロックよりも、透明性を持って対応した方が、信頼回復に繋がることが多いからです。
簡単な言葉で書いていますが、実際に行おうとすると、難しいと思います。そこで、失言管理マニュアルなるものを作成しておくことも、慌てない要素になります。基本方針、ありがちな失言の事例、失言した場合の対応、社内の文化醸成、記者会見向けのQAなどで構成しておけば足ります。使用しないことが一番良いことですが、あってからでは遅いので、役立つと思われます。いかがでしょうか。



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