考える力を育てる

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これまでのブログでは、保険業法改正を受けた社内ルールの整備や、従業員・組織長に“考える習慣”を根づかせる方法について考察してきました。 今回はその続編として、役員や管理職自身に対して「考える力」を育てるために、どんな習慣や訓練が必要かについて、整理してみたいと思います。

<なぜ“考える力”が必要なのか>
制度改正や社会の変化に対応するには、トップ層が「考える力」を持っていることが不可欠です。 しかし、現場では「何をどう考えればいいのか分からない」「問いかけることに慣れていない」と感じている経営者や管理職も少なくありません。
 〇 判断を部下任せにしてしまう
 〇 ルールを“守るもの”としてしか捉えられない
 〇 問題が起きたときに「誰の責任か」だけを探してしまう
こうした状態から抜け出すには、“問いを持つ習慣”と“考える訓練”が必要です。

<管理職・役員が持つべき習慣と訓練>
以下は、現場で実践できる「考える力」を育てるための習慣と訓練の具体例です。 どれも、特別なスキルや知識がなくても始められるものです。

1.毎週ひとつの「問い」を持つ習慣
 〇 今週、自分が判断したことの中で、迷った場面はあったか?
 〇 今回の対応は、顧客のためになっていたか?
 〇 このルールは、現場にとって意味があるか?
書き出すだけでも、思考の癖が変わります。中には、明らかに迷わないレベルの事象や、危険な発想が出てくることがあるかも知れませんが、これは「問い」を持つためには必要な要素の一部であると考えて、冷静に聞いて差し上げて下さい。

2.部下との対話で“問いかけ役”になる訓練
 〇 この対応、どう思った?と聞いてみる
 〇 他の選択肢はあったと思う?と一緒に考える
 〇 この判断、社会からどう見られるだろう?と視点を広げる
答えを出すより、問いを投げることがリーダーの役割です。相手が出した答えを否定したくなる時がありますが、否定しては、いけません。なぜなら、今回は考える習慣を付ける訓練だからであり、正解を導き出す訓練ではないからです。

3.他社事例やニュースを“自分ごと”として考える訓練
 〇 ニュースを見て、「自社ならどう対応するか?」を考える
 〇 他社の事例を見て、「自分ならどう判断するか?」を話し合う
 〇 保険会社との協議内容を振り返り、「対応や判断は妥当だったか?」を検証する
社外の情報を活用して、“自分の判断材料”に変える力が育ちます。最初は、「人の不幸は蜜の味」のように感じる人がいるかも知れませんが、そういう方には、これは我が事に置き替える訓練であると説明して差し上げて下さい。

4.自分の言葉で“制度の意味”を語る習慣
 〇 保険業法改正の趣旨について、自分の言葉で部下に説明してみる
 〇 社内ルールの背景について、「なぜこのルールがあるのか」と語ってみる
 〇 苦情対応や推奨販売の判断について、「何を大切にしているか」を言語化する
説明できることは、理解していること。語ることで思考が深まります。中には、口に出した途端に、周囲から軽蔑の眼差しを受けることもありますが、その場合は周囲がどういう目線で見ていたかを直接本人に伝えて、次回は自ら自制するように促すことで、育成していきましょう。

<まとめ>
「何もできない」と感じている経営者や管理職にこそ、問いを持つことから始めてほしいと思います。 制度やルールは、守るものではなく、考えるための“きっかけ”です。 問いを持ち、考える習慣が根づいた組織は、制度改正にも柔軟に対応でき、顧客や社会からの信頼を守る力を持ちます。

今回のテーマは、自分自身の課題であり、自分に対する問いかけでもありました。次回は、こうした“問いの習慣”を、組織全体の改善やルール見直しにどうつなげていくかについて、さらに掘り下げてみたいと思います。 本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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