最近、カスタマー・ハラスメントへの対応をテーマにした記事を公開したところ、多くの反響をいただきました。 その中で改めて感じたのは、「外からのハラスメント」に加えて、「社内で起きるハラスメント」への対応が、まだ十分に語られていないということです。
今回は、保険代理店・保険会社(損保・生保)の両方を読者に想定しながら、社内ハラスメントへの向き合い方と、安心して働ける組織づくりの必要性について、考えてみたいと思います。
<ハラスメントは“内”にもある>
ハラスメントという言葉を聞くと、まずは顧客からの過剰な要求や暴言など、いわゆる「カスタマー・ハラスメント」を思い浮かべる方が多いかもしれません。 しかし、実際には社内でも、以下のようなハラスメントが起こり得ます。
〇 セクシャル・ハラスメント(性的な言動・不快な冗談)
〇 パワー・ハラスメント(立場を利用した威圧・無視・過剰な指導)
〇 モラル・ハラスメント(人格否定・陰口・排除)
〇 その他、同僚間・上下関係・部署間での不適切な言動
最近は、昭和世代と平成世代の価値観の違いが、自分の常識が通用しないという事象を生み、いつの間にかハラスメントに類する言動や関係に発展することがあります。これらは、顧客対応とは別の文脈で、組織の信頼と安心を揺るがす要因になります。
<保険業界ならではの構造的リスク>
保険代理店や保険会社では、以下のような構造がハラスメントの温床になりやすいことがあります。
〇 業績や数字への強いプレッシャー
〇 上下関係が明確な営業組織
〇 本社と現場、代理店と保険会社、営業職員と管理者の力関係
〇 長年の慣習や“空気”が優先される文化
こうした環境では、意図せずとも誰かが加害者になり、誰かが声を上げられない被害者になることがあります。 特に営業職員や募集人は、個人事業主的な立場でありながら、組織の指導や評価の影響を強く受けるため、ハラスメントが見えにくく、声を上げにくい構造になりがちです。
<組織としての方針と仕組みが必要>
ハラスメントを防ぐには、個人の意識だけでなく、組織としての方針と仕組みが必要です。
〇 ハラスメントを許容しない姿勢の明示(社内ルール・定期的なトップメッセージ)
〇 相談しやすい体制の整備(窓口・匿名相談・外部機関との連携)
〇 判断基準と対応フローの明文化(マニュアル・事例集)
〇 定期的な振り返りと教育(研修・事例共有・ルール見直し)
これらが整って初めて、従業員・募集人・営業職員は「安心して働ける」「声を上げても守られる」と感じることができます。
<ハラスメント対応は“信頼の土台”をつくる>
ハラスメント対応は、単なるリスク管理ではありません。 それは、組織の信頼と人間関係の土台をつくる企業経営者の営みです。
〇 募集人・営業職員が安心して顧客対応できる
〇 管理職が育成と支援に傾注できる
〇 保険会社と代理店が対等なパートナーとして協働できる
〇 組織全体が「人を大切にする文化」を育てられる
こうした環境があってこそ、業績や制度の改善も、持続可能なものになります。
<まとめ>
ハラスメントは、誰もが加害者にも被害者にもなり得るものです。 だからこそ、制度と仕組みで「守る文化」を育てることが、業界全体の信頼と質の向上につながると、私は考えています。
次回は、社内ハラスメントに関する具体的な対応マニュアルや、相談体制の整備方法について、さらに掘り下げてみたいと思います。 本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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