等級なしの車両保険

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保険会社と自動車メーカーが、系列販売店で購入した新車ユーザー向けに、等級なしの車両保険を開発したと報道がありました。保険金は最大10万円、加入者数と事故件数に応じて保険料が変動し、最高月々1,500円。本日は、この商品について考えてみます。

総合自動車保険では支払保険金の額に関わらず等級が下がり、保険料が上がります。少額修理の場合、事故により高くなる差額保険料が修理額を上回り、保険を使うのを断念するという課題があります。この新商品は、少額修理の場合に等級が下がらないので、この課題を一義的には解決すると思われます。

しかし、この商品には潜在的なリスクがあると思われます。10万円未満の修理を一律10万円にして差額を詐取する、お客様の来店時にへこみや小傷を見つけて無断で請求する、本商品の請求対価として入庫を強制する、複数箇所の損傷を一度に請求するなど、クローズドの世界、かつ少額であるが故に、不適切または不正な行為に至る動機が、発生しやすい気がします。

昨年、大手中古車販売店による保険金不正請求、自動車や部品製造メーカーによる認可と異なる品質不正事件がありました。この報道を読んで、同じ仕組みや要素が潜在化していると感じます。

一方で、総合自動車保険に当該補償を特約付帯して特約保険料をいただき、一定金額までは等級ダウンしない仕組み作れば、一つの保険で済むメリットもありますが、潜んでいるリスクは同じです。

この課題は、新車購入時の付帯補償サービスとして解決すべきと思います。月々1,500円×12×3年分=54,000円を新車購入時に支払い、3年に一度は10万円以下の損傷を保険に頼らず修理できる方が、不適切や不正が起きにくく、お客様の満足度も高いと思います。仮に不正な修理があっても、系列販売店は自社の利益を毀損するだけなので、法令違反や社会規範に反する行為には該当しないでしょう。

この商品は、自動車メーカーと保険会社の共同開発商品です。それゆえ、仮に不適正や不正な請求が常態化すれば、昨年と同種の過ちを犯したとみなされる可能性があり、コンダクトリスクが高いと考えられます。私見ではありますが、本報道を見た感想をコンプライアンスの観点で述べさせていただきました。

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