内部統制の手順

man raising right hand

本日は、私がこれまで経験してきたことを踏まえて、内部統制の手順をご説明します。かなり簡素化していますので、ご注意ください。

コンプライアンスや内部統制と聞くと、指示や研修を思い浮かべる方が多いと思います。実際、平常時には、年度ごとの実施計画に従い、社内へ指示を出して、役員向け、従業員向けの研修を行い、啓蒙するととともに、知識を習得させて教育していく企業が多いと思われます。

特に、指示を行う内容が企業理念や経営理念に合っているか、社内研修がおざなりの内容になっていないか、留意しながら進めていくことが必要です。経営者が「毎年同じ趣旨だから省略しよう」「同じ趣旨だから理解しているだろう」などと考えていると、指示内容にも現れてしまい、実効性を求めているはずなのに、いつのまにか「例年通り」と伝わります。

役員向けの研修を避ける企業がありますが、役員が真剣に取り組み、興味がある事項は、従業員が本気になり統制が効くと言うのが一般的です。役員だから大丈夫、理解している、できている、見識があるというのは、明らかに誤りです。従業員とは異なり、大局的な研修が必要になるでしょうから、極力外部講師にお願いすることが望ましいと思います。弊社では、役員向け研修講師も承っています。既往6か月間に、9社、約900名の皆様の研修を担当した実績があります。

一方、非常時(=有事)には、ピンポイントで他に同種の不正行為に関する調査や、再発防止策の策定実施確認などの一連の作業が必要です。再発防止策として研修を行い徹底するという企業が多いです。金員詐取や金銭不正が起こったのに、「会社のお金を私的に流用してはならない」「取引先に対してキックバック等の見返りを求めてはならない」などの直接的な研修を行っている企業があります。これは、交通違反を犯した人に対して、運転免許証を持っているのに、「信号が赤では進んではいけない」「一旦停止では歩行者優先」と唱えているのと同じで、ほとんどの場合、効果はありません。もう少し詳しくご説明したいのですが、書面の都合上、別の機会にします。

指示と研修以外では、新ルールの策定、不適切な行為が起こりにくい仕組み作り、監査けん制業務の適格性確認、財務報告書の適格性判断根拠の見直しなどがあります。むしろ、この辺りを集中的に見直しを行うことをお薦めしています。加えて、企業を取り巻くリスクは毎年変化がありますので、少なくとも年度ごとには見直しを行うべきと思われます。

簡素化した内部統制の手順としては、上記に挙げた項目を漏れなく確認して見直していくことが足りますが、事業の拡大や新事業の開発など、環境変化に加えて自社の変貌にも着目する必要があります。内部統制で確認した記録を一覧にして、毎年追加・削除しながら進化させていくという姿勢であれば、対外的にも説明できます。

年度替わりにあたり、内部統制に関わる役員管理職にて、もう一度目的や趣旨を理解し直していくことが理想形です。その際のNGワードは、「前年と同項目、同内容で実施」です。社内でそのような対応は難しい場合には、社外取締役や社外監査役から意見を求める方法がありますが、実際には社外取締役や社外監査役にそこまで求めない傾向が多いようです。

弊社では、その辺りのご相談も承っております。業態、業種、社風、規模特性が異なり詳細に理解していない代わりに、企業理念や経営理念に合っているか、リスクの見直しを行っているかと言う点から、ご相談に乗ります。「社外から見た眼」を使ったこと自体に、コンプライアンス経営としての価値があります。

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