大麻事件の説明

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大学の名門スポーツ部において、大麻使用疑い事件が発生し、経営トップが会見を行いました。各種通報から会見に至るまでの対応につき、不適切はなかったとの主張に、違和感を覚えました。コンプライアンス経営の観点で、考えてみます。

対応の適不適の判断は、全容解明後に、社会が判断します。大学側からすると、学生逮捕までの過程に、幾つかの疑義のある対応について、説明責任を果たす趣旨で会見したと思われます。しかし、社会は不適切と主張し、大学側は適切と反論して、平行線になることから、説明自体が意味を成しません。

全容解明する前に行う会見では、不祥事を起こしたことに対する謝罪、現段階で判明している事実、逮捕までの過程に疑義があることに関する謝罪、今後の予定、加えて、大学としての姿勢について、正しく説明することが必要でした。会見における発言内容が事実と異なることは避けなければなりません。事件発生後の対応について、隠ぺい行為の疑いを受けて、大学のスタンスを疑われるからです。

疑わしかったのは、2点です。一つは、2回の学生に自白につき、同一人物か否かを説明できなかったことです。2回とも同一人物であれば、学生の印象は良くなるので、説明していたはずです。別人物だから説明できないと、容易に推察できます。

もう一つは、大麻と覚せい剤と思われるモノの発見直後に、警察へ引き渡さなかったことです。常軌を逸した行動です。大麻と覚せい剤は、吸引後数日間は、血液検査で確認が可能ですが、遅れると確認できなくなり、証拠がなくなります。それゆえ、証拠隠滅を疑われることから、知識がある方であれば、直ぐに警察へ引き渡しを行い、捜査に委ねます。

学生が故に自首を促しすことを指導していたと説明しましたが、それは、平時に行うべきことであり、教育機関と言えども、有事の際に行うべきことでは、ありません。上記二つの疑わしい行動は、殺人事件でも同じことをするかを考えれば、分かります。

会見を行う際は、大学やスポーツ部の存続や活動の継続などを考えることなく、一旦、頭をフリーズさせて、社会に対して事実を正しい言葉で説明し、不適切と指摘を受ければ、謝罪することです。当該大学は、平時から予行演習やリスク対応訓練を行っていなかったかも知れません。平時からの準備が、何より大切です。優れた人物でも、準備がなければ、適切には行動できないと考えて、経営していくべきと、改めて感じました。

なお、個人的には、警察関係者への相談という言葉遣いが気になりました。覚せい剤事件の担当部署ではない警察官か、警察OBへの相談ではないかと推測されるからです。隠ぺい行為を疑われる可能性があるので、慎重に言葉を選ぶ必要があります。

理事長は「大麻や覚せい剤でなければ良いと、祈るような気持ちだった」と発言しましたが、不祥事と思われる事象が発覚した場合には、その考えは捨てねばなりません。準備が足りないと心構えができていない典型的な事象でした。残念です。

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