コンプライアンス活動を強化しても、不正、不適正、不適切な事業活動が減らないというお声を聞きます。私見ですが、そういう組織には、内部統制力に課題があると思われます。本日は、内部統制力について、考えてみます。
トップメッセージの回数を増やし、階層別定期研修を行い、ルールを細かく定め、点検や監査を対話による課題掘り下げ式に変えても、効果が出ないことがあります。10年前の組織と今の組織の違いを考えると、理由と課題が見えてきます。
業務効率や利益率向上を目指し、組織の数を減らし、人数の多い組織にしました。組織長は多忙となり、従業員へ目が届かなくなり、その結果、従業員満足度の指標が下がりました。対策として、サブマネージャーやチームリーダーを増やしました。
対策を講じた結果、いつの間にか複線マネジメントの組織が出来上がりました。複線マネジメントの弱点は、責任の所在の不明確さと内部統制力の弱さにあります。
加えて、組織が大きくなり過ぎた為に、組織長が各事業活動の実務を知らない、または興味を持たなくなりました。組織長は、事業活動の改善を唱えるだけで、実務に対する意見や経営力を示す機会が、少なくなったのではないかと思われます。
マネージャーは、経営マネジメントと育成が主要業務なので、実務に詳しくなくとも構わないというご意見があります。不正、不適正、不適切な事業活動は現場で起きていて、マネージャーに発生原因を掘り下げて、解決策や再発防止策を求めています。
実務に詳しくなくとも、マネージャーは、発生原因の掘り下げや事業活動の改善点を導き出し改善活動ができると考えています。しかし、経営トップやコンプラ担当部署は、マネージャーへの期待と現状との間のギャップに気づいていません。
事業活動を見る力の育成不足と、観察・けん制を行う範囲が広過ぎることが、内部統制力が発揮できない要因では、ないでしょうか。見える範囲が広くなっても、見えている範囲は、昔のままというのが、期待と現状のギャップだと感じています。



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