生保の営業職員による巨額の金員詐取事件が相次いで発生し、業界では大きな課題になっています。金融庁は、生保協会を通じて、業界として統一した再発防止策の提出を求めました。本日は、生保営業職員が巨額の金員詐取事件を起こす原因と再発防止策について、考えてみます。
生保の営業職員体制は、他業界にない体制です。それゆえ、自社では常識となっていても、他の金融機関や一般企業では非常識な事象が必ずあります。自社の常識の中に、不正行為を黙認する要素や、営業職員の管理体制の甘さがないかと言う観点で、原因を考えてみます。
1.営業職員の社内ステータスにより、社内ルール等に差が生じている
2.営業部門の組織長に、不適切な契約を容認または黙認する風土がある
3.成績が良い営業職員を必要以上に持ち上げる風潮がある
4.親密な顧客の保守業務を営業職員任せにする
5.営業職員の生活環境や経済環境を知ろうとしない
6.営業職員の商談記録を管理していない
上記は、恐らく国内生保会社にあるであろう管理体制の特徴ではないかと思われます。必ずしも全てが当てはまらないとしても、幾つかは思い当たる組織長やコンプライアンス責任者もいると思われます。
営業職員による金員詐取事件は、保険会社が信頼を損う事象では、ありません。最優秀な営業職員が、会社ロゴを使って募集パンフレットを偽造し、「特別待遇を受けている自分」が「特別な販売権利」を持ち、「特別な顧客だけが加入できる金利」があると擦り寄って来るから、お客様は騙されます。
生命保険会社は、年間に大量の営業職員を採用し、半分は1年以内に脱落して、残りの半分の中から最優秀と評価した営業職員が、親密な顧客を騙しているという事実を受け止めなければなりません。
再発防止策として、社内管理体制の見直しや、営業職員に対する教育・指導、不正感知システムの導入などが考えられると思います。しかし、発生原因の多くが、上記に記載した生保業界独特の風土や仕組みにあるならば、実際にしなければならない再発防止策は、以下の二つです。
一つは、自社の常識が他社の非常識になっている部分を見直すことで、社内風土や営業職員を見る目を変えていくことです。役員や管理職のリスク感応度を高める必要があります。もう一つは、最優秀な営業職員に対してのみ、顧客との関係や商談内容を会社を定期的に把握する仕組みを作ることです。



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