再販売価格の拘束

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公正取引委員会が、家具卸売り大手企業に対し、独占禁止法違反の疑いで、立ち入り調査に入った旨、報道がありました。最近は、独占禁止法違反の疑いで立ち入り調査に入るケースが多くなりました。本日は、独占禁止法違反について、考えてみます。

自社の商品を値下げ販売した小売業者に対し、出荷停止や出荷価格の引き上げを示唆し、指定した価格で商品を販売するよう強要していた疑いです。コロナ禍で在宅勤務が増えたことで、オフィスチェアの需要が高まり、値下げ販売によるブランド価値の低下や値崩れを避ける狙いがあったようです。

この需要の高まりは、卸売業者にとって、千載一遇のチャンスです。一方、多くの小売業者は、家具以外も併売していることから、定価販売で家具単体の高い利益を確保するより、他の併売商品と同じように値下げやお手頃感を打ち出す戦略を取ったのでしょう。この戦略の違いを認めたくない卸売業者が、再販売価格を拘束し、上記調査に至ったものと思われます。

企業は、チャンスの時ほど、強気になりやすい傾向があります。価格を下げることでブランド価値を落としたくない、値崩れした商品と差別化したいなどの思惑はあります。しかし、価格は小売業者が定めて消費者が判断するので、その決定は小売業者へ委ねていると言うことを忘れては、なりません。

独占禁止法違反への対策としては、販売情報や営業情報が、けん制部門(内部統制部門や監査部門)へ入る仕組みにしておくことです。けん制部門であれば、事業活動を取り巻く法令や禁止行為に抵触する可能性があれば、営業現場へ注意喚起して、歯止めをかけます。

小売業者の事業活動における要請行為なので、けん制部門があっても、情報収集や実態把握を行うことは、難しいかも知れません。それゆえ、他企業の失敗事例を活用し、営業部門向けの研修を行うなど、近い未来に起こり得る不祥事について、取組みを行うことに尽きます。発生時に把握できない事象は、未然に防止するという考え方です。

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