公正取引委員会は、雑誌ライターやカメラマンに支払う原稿料などを著しく低く抑えたとして、大手出版社と子会社の下請け法違反を認定し、再発防止を求める勧告を出す方針とした旨、報道がありました。本日は、フリーランス取引適正化法について、調べました。
報道によると、2023年初めに、雑誌記事の作成や写真撮影を委託する20以上の事業者に対し、原稿料や撮影代を同年4月号の掲載分から引き下げる通告を行ったそうです。取引条件の変更に関する事前協議はなく、引き下げ率が数十%に達したケースも複数あった模様。個人事業主として働くフリーランスが多くを占めていました。
取引上の優越的な立場を利用し、自らの利益の確保を優先した可能性が高いそうです。ライターらは継続的に仕事をもらう立場のため、契約の打ち切りや将来的な関係悪化を恐れ、不当な要求に従わざるを得なかったとみられます。
フリーランスの保護を巡っては、11月1日に新法「フリーランス取引適正化法」が施行されました。先月までの違反行為は新法の対象外となるため、今回は下請法を適用するそうです。
フリーランス取引適正化法の目的は、発注事業者の間の取引の適正化と、就業環境の整備を行うことにより、フリーランスが安心して働ける環境の整備を図ることです。フリーランスとは、業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないものと定義されています。それゆえ企業が業務委託する場合は適用対象となり、消費者が業務委託する場合などは適用対象外となります。
新法では、事業者に対し7つの義務を定めていますが、発注事業者や業務委託期間で義務内容が異なります。7つの義務とは、書面などによる取引条件の明示、払込支払期日の設定・期日内の支払い、7つの禁止行為、募集情報の的確表示、育児介護等と業務の両立に対する配慮、ハラスメント対策に関する体制整備、中途解除等の事前予告・理由開示です。
7つの禁止行為とは、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しです。フリーランスと取引または業務委託がある企業は、公正取引委員会のフリーランス法特設サイトをご確認下さい。公正取引委員会フリーランス法特設サイト | 公正取引委員会
この事件から学ぶべきは、下請け業者やインボイス未登録者などの弱者に対して、不当な行為を強いれば必ず発覚し、法の裁きに加えて、培ってきた信頼を一気に失うとことです。発覚の経緯は、被害者による通報です。ひと昔前は、通報へのハードルは高かったですが、現在は通報こそ正しい道と考えるように変わりました。
たとえ不当な行為を強いるのが一部の事業部であっても、信頼を失うのは全社です。そういう知識と理解の下に事業活動を行い、コンプライアンス研修にこの知識を含めるなどの工夫が、これからの企業には必要です。この程度なら我慢するだろうという考え方を許す企業は、信頼を失う機会を増やします。対策を講じましょう。



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