業務品質向上と成長性

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今、生損保問わず保険業界は、大きな転換期を迎えています。代理店に対する過剰な便宜供与や、自動車修理業代理店による保険金不正請求、保険会社による保険料調整問題が、その要因です。本日は、業務品質向上と成長性について、考えてみます。

多くの代理店は、各保険会社が示したルールや表彰制度に沿って、事業活動を進めています。それゆえ、各保険会社が示すルールと表彰制度を変えれば、業務品質と成長性にシフトできると考えられます。法令違反の有無や頻度で業務品質を評価している、各保険会社が推奨している商品やシステムの推進度で評価している、単年度やキャンペーン期間で成長性の評価をしているなどは、典型的な事例です。

その結果、保険成約に関わる手数料やボーナスは、挙績規模、前年比増減、自社推進商品やサービスへの貢献度で決まる仕組みになっており、加えて豪華な表彰式、本社と担当部署による二重表彰(商品)などが、過剰な便宜供与を誘因していました。また、代理店やその親会社の求めに応じることで、比較推奨販売方針、保険料シェア、テリトリー制度を有利に進めていました。

こういった、いわゆる悪事の数々を表に出して論議を深めていかないと、本社が仕組みや制度を変えた程度では、なかなか第一線に浸透しないと思われます。今までやってきたことの多くが間違いで、考え方そのものを変えなければならないからです。

業務品質向上と成長性を求めるなら、まず挙績規模という考え方を廃止する必要があります。業務品質は、代理店全体で判断するからです。挙績規模が大きければ人員数も多く、業務品質を統一するハードルが高くなるからです。

もう少しご説明すると、業務品質向上には、代理店内で低い業務品質の項目や事象を高める、良くする必要があり、低い項目や事象が平均値以上になることや、高い業務品質に統一されることを評価すべきです。人員規模が大きい代理店が、業務品質を統一すれば、高い業務品質に値すると思います。

顧客対応、アフターフォロー、個人情報保護、ガバナンスの各カテゴリーにおいて、低い業務品質とはどういう事象なのかを定め、平均値以上にする対策や低い業務品質項目をなくす対策に対して、進捗報告と見直しを行う事業活動を継続していることを評価すると、業務品質に対する考え方も変わると思います。

その際、業務品質とは別に、最低限必要な項目や事象については、別途求めると良いでしょう。例えば、ホームページへの開示やKPIの策定などは、できたことで業務品質は向上しないので、評価項目から除外します。法人の決算書なども同じです。

要すれば、法令抵触レベルは、そもそも業務品質と言わないと考えるべきです。そうしないと高い業務品質を目指すつもりが、いつの間にか法令違反を起こさないことを目指すことに変わり、小さな法令違反を許容するようになれば、便宜供与に繋がるからです。

また、成長性は、複数年度で捉え、絶対評価と相対評価の組合せで評価する方式です。例えば、募集人1名、10名、100名の区分にし、各平均の指標や件数の前年度比を評価基準とします。絶対評価値を定め、募集人規模のグルーピングにより相対評価していく方式です。募集人が多いと、平均値が下がる傾向があるからです。

顧客対応では、規模や特性ごとに、どういう対応が高い業務品質なのか、アフターフォローでは、規模や特性ごとにどのようなフォローが有効であり顧客から高い評価を受けるのかを示します。個人情報では、情報漏えいが無いことに加え、顧客に安心させるレベルを示します。ガバナンスでは、社内評価や第三者評価などを受けることで、規模や特性によりどういうガバナンスを行うと、業務品質が高いと評価できるかを示すことで、代理店が求められている業務品質への理解が深まると思います。

比較的適正な運営に努めている代理店さんは他山の石に見えるかも知れません。そういう代理店さんには、電話募集や郵送募集、団体一斉募集では、どういうエビデンスを残せば、高い業務品質と評価され、お客様が安心して任せられるかを考えることをお薦めします。

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